中央防波堤
2週間前から、ついに飯場(はんば)へ追いやられて、ミシミシ土方の毎日。
埋め立て地だからタバコ1つ買いに行くにもクルマで行かなくてはならない。
何も遮るものが無い所だから吹きっさらしで寒いこと!
ここでは、溶接、切断その他いろいろやって、だいぶ勉強になった。
飯場のみんなに挨拶して帰ったのが8時。会社着9時。明日の朝9時に大阪に行く事になる。10時帰宅。溜まった新聞を読んで、良く遊びに来るノラネコにエサやって、出張の用意。
この2週間は、生まれて初めて飯場で過ごした。
朝5時、強栄丸の船長が中山くんを起こしに来る。八戸なまりの大声で、
「お〜い、おけろ〜、台船持ってこにゃならんで、12号地のをあっちさやって、13号地のをこっちさやるがら、おんめは12号地から乗れ、ええが〜」
昨日の夜は生まれて初めての飯場で、なかなか寝付けなかった。
2段ベッドの下で、大工のクラさんがでっかい声で寝言と歯ぎしりだったし、、。
「ワカイシューガキタ、わかいしゅーがきた、若い衆が来たーーー!」って、どんな夢見てるんだか。
7時起床。アサメシ。朦朧としながら黙々と食う。
「おー、潜水夫のあんちゃん、そこの刺身取ってくれや」
「えっ?刺身?」
「それだ、それ」
「たくわん?」
「飯場じゃ刺身ってんだ」
夕食後。
八戸軍団が酒飲んで大騒ぎ。
初めての俺に気を使ってくれて、いろいろと声をかけてくれる。
「潜りは仕事のほう、どうだ?」
「しかしやっぱし、陸上(おか)の方がなんつったって仕事は大変だよ」
そこへ今度は船乗ってる人が来て、
「しかしな、やっぱり海の仕事はキツイべ?おかとはくらべもんになんねーよな」
まぁ、なんでもいいや、早く慣れよう。
港湾での工事は、岸壁を作る工事などが多い。
重機で鉄板を打ち込んで並べ、囲いを作ってから、コンクリートを流し込んだり、ゴミや土砂を入れて埋め立て地を作る。ダイバーの仕事は主に、囲いになる鉄板の水中部分の溶接などだ。
水中溶接はなかなか楽しい。一応感電しないようになってはいるのだけれど、やはり水の中だ、手にピリピリ来る。
ウェットスーツを着て、マスクをして、レギュレターをくわえるけれど、ボンベは背負わない。レギュレターに長いホースを繋げて、陸上のコンプレッサーに繋げて有る。これで、何時間でも潜ったままでいられるわけだ。工事の場合、水深は1m〜3m程度。
朝潜って作業を始めたら、昼飯になるまで潜りっぱなしで作業をする。途中でタバコを吸いに上がって来るが、水面から顔だけ出して、タバコをロープで降ろしてもらって一服したりする。
こういう場所では殆どの場合水中の視界は30センチ以下。ヘドロが舞っていて視界ゼロの場合もとても多い。目の前でライトを点けても全く見えないので、殆ど目をつぶっているのと同じ状態だったりする。
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